「本当に涙が出そうになります」2

昨年お店が40周年だったこと、昔東京のオーディオメーカーに勤務していたこと、変わった形の天井の秘密、JAZZ喫茶に書籍が多い理由、

 

マスターないろんなことを話してくれた。

 

「なにか音楽をやられているんですか」

と聞かれたので

 

「ジャズは聴くのが好きで、バンドではロックのようなことをやってます」

とこたえた。

 

するとマスターは

「ぼくもロックが好きでよく聴くんですよ。ツェッペリンからクイーンくらいまでですかねぇ」

と言ってLED ZEPPELINの”天国への階段”を聴かせてくれた。

1972年のカリフォルニアで録音されたライブ盤だった。大音量のVITAVOXで聴くジョン・ボーナムのドラムの迫力は凄まじかった。

 

「これはねぇ、CDのほうが良く録れてるんですよ」

とマスター。

アナログ至上主義ではないところに非常に親近感がわいた。おれもその音楽が求める容れ物というのは確かに存在すると思うからだ。

 

 

おれは考えた

 

 

「(これ、今日アラバマシェイクス聴かせてもらえるんじゃないか?)」

 

万が一の事態にそなえてレコードバッグにアラバマシェイクスのレコードを忍ばせておいたのだ。

しかし物事には順序というものがあるので、まずはリクエストをお願いした。

 

 

「スタンゲッツでオススメはありますか?」

 

 

「スタンゲッツですね、ええ、たくさんありますよ」

 

 

そう言うとマスターは棚の大量のレコードから1枚のアルバムを取り出した。

 

「本当に涙が出そうになります」1

計画があった。

 

1年くらいかけて達成できれば良いと思っていた計画だった。

 

古町のソープ街の中ほどにJAZZ FLASHというジャズ喫茶がある。

計画とは、1年ほどかけてその店に通いつめて常連になり、ある日人の少なそうな時間帯を見計らってアラバマシェイクスの”SOUND&COLOR”を流してもらうことだった。JAZZ FLASHには400万円するVITAVOXのコーナーホーンのスピーカーが設置されている。

 

 

何度か店の前まで訪れた事はあった。しかしタイミング悪く営業していなかったり常連さんと思わしき方の貸切イベントをやっていたりでなかなか店内に入れなかったのだが、先日初めての入店に成功した。

 

計画が始まった。

 

「こんにちわ、やってますか」

と尋ねるとマスターと思わしき男性は(そのとき店内にはその男性しかいなかったし、その男性以上にマスターの雰囲気を纏った人物がその店に存在するとは思えなかった)

 

「はぁい、どうぞ」とこたえた。

他にお客さんがいなかったためか、店内は無音だった。

 

席に着くなり、さっそくトリオ編成のピアノジャズが流れた。(誰の曲だったんだろうか)

初見の若造たちにVITAVOXの洗礼を浴びせるようにマスターはゆっくり音量をあげた。

一関のベイシーで聴いたJBLとはまた違う、暖かみのある音だった。

 

薄暗い店内、良い音を鳴らすためだけに設計されたと思われる間取り、仁王像のように対に設置されたVITAVOXのスピーカー、大量のレコード、吸音のために掛けられた厚手のカーテンと壁一面のスウィング・ジャーナル、

そして祀(まつ)られるようにライトアップされたジョン・コルトレーンの写真。

 

「あれはコルトレーンですか」

と聞くとマスターは

 

「ええ、神様です」

とこたえた。

 

 

 

 

 

つづく

 

 

#mood

最近は県外でのライブの日の空き時間は近くにレコード屋や古書店がないか調べて足を運ぶのが習慣になっている。

 

先日の金沢でのライブの際にはじめて行ったレコードジャングルというお店

 

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個人経営だと思われるこのお店、とにかく圧巻の品揃えだった。ずっと探していたけどなかなかみつからなかったジョンコルトレーンやボズスキャッグス、ハービーハンコックのレコードがいとも簡単に見つかった。

決して広くはないお店の中にお客さんは7〜8人ほどいて、みんな無言でパタパタとレコードと対峙していた。

 

レコードジャングルで見つけたボズスキャッグスのシルクディグリーズというアルバム

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アナログレコードで聴く”We Are All Alone”の破壊力は凄まじかった。

アナログレコードからはストリーミングやCDでは到達できない膜を突き破って訴えかけてくるなにかを感じる事が多い。

 

合理化、最適化、効率化のこの時代だからこそ無駄な事や無意味な事が産み出す”ムード”がいっそう際立つのだと思う。

 

ゆっくり時間をかけてつくったムードをゆっくり時間をかけて味わいながら生きていたいなということを、アナログレコードは再確認させてくれるのです。

はたして正常

 

 

他人の行動に対してなにを以って正常、異常と判断するか

 

 

 

 

 

 

これは非常にデリケートな問題で、場合によっては職業差別ともとられかねない話題なのですが、そんなつもりは毛頭ないということだけはじめに断っておきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

SNSで繋がっているAさん(仮名)という人がいまして、現実世界での繋がりはほとんど無いのですが、その方は普段恋人との写真を載せたり、飲み会、食べ物、参加したイベントなどの写真を載せているごく一般的な方。

とくになんの交流もなく、たまにタイムラインに現れる人、という印象だったのですが、

つい数週間前から

 

 

「最近副業をはじめました」

「まさか自分がビジネスに手を出すなんて思ってもいなかった」

「新しい人脈が増えて、友達と友達が繋がっていくのが嬉しい」

 

 

あげくの果てには一万円札の束の写真を載せ始めました。

 

勘の鋭い方でなくてもお気付きでしょうが、おそらくネットワークビジネスマルチ商法ねずみ講と呼ばれているものです。(調べてみたらあり得ないくらい利率の高い投資系のもの)

 

当事者からすれば真剣に取り組んでいる仕事なのであまり悪く言えないのですが、

純粋さを全く失い、何事もまずは斜に構えて物を見るタイプの僕からしたら正直、

これは正直な話

 

「気味が悪い」

 

というのが素直な感想でした。

 

仕事の内容や、システム、利幅、先輩後輩の独特な呼称、それらを差っ引いてもただ皮膚感覚で得体の知れない薄気味悪さを感じてしまいました。

(オイ!それは職業差別だ!という方、最後まで読んでください。)

 

 

ただ、Aさん(仮名)は以前に比べてやる気に満ち溢れて、活き活きとし始めた印象を受けました。

いままでの年齢相応のごく一般的なSNSの投稿内容からは想像がつかないほどのエネルギーを感じました。

それはなにかに熱中できる事を持っている人だけが放つ事のできるエネルギーのような気がします。

 

 

果たして、Aさん(仮名)が異常で、僕が正常なのか

 

 

ギターアンプ電源ケーブル(コンセント)を2万円で買う事の方が異常だという人もいるでしょうし、

良い音でジャズを聴くために往復10時間の道のりを運転して一本1200円の缶ビールを注文し、帰り道に感動して泣いてる男のほうが不気味だと思う人もいるでしょう。

ただひとつ言えることは、なにかに情熱を注いでいる当人は例外なく幸福だ、ということです。

それがビジネスであれ宗教であれ音楽であれ。

 

 

 

そもそも正常な人など存在するのか

 

それは誰が何を以って判断するのか

 

そんな事を深く考えさせられました。

 

10年越し

10年前にTSUTAYAの巧みなコピーに誘惑されて購入したhydeout productionsの2nd collectionsというオムニバスCD。

 

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女性のボーカルの曲ですごく気に入ってる曲があって、ずっと誰の曲かも調べずにいたんだけど

 さっきYouTubeをサーフィンしてたら発見してしまいました🏄

 

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クラムボンのFolkloreという曲でした。(オムニバスのはアレンジが違う。)

 

なぜ今までクラムボンを聴いてこなかったのかという自戒の念でいっぱいです。

 

今日はそんな感じ。

 

 

二千年前それは生まれ、二年後にこの世は滅びた

タイトルは坂本慎太郎”スーパーカルト誕生”の歌い出しです。

 

この”スーパーカルト誕生”が収録されてる「ナマで踊ろう」というアルバム、初めて聴いた時に坂本慎太郎のソロアルバムだっつってんのに一曲目からぜんぜん知らない女の人が丸々一曲歌っててビックリした記憶がありますね。

そのビックリを引きずったまま二曲目に”スーパーカルト誕生”というスーパー薄気味悪い曲が始まるのでもう一瞬で心掴まれてしまいました。

 

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坂本慎太郎 ”ナマで踊ろう”

 

最近だとVulfpeckというバンドの「The Beautiful Game」というアルバム、ジャーマンポップ風のミニマルファンクという前情報だけ携えて聴いたんだけど一曲目がクラリネットソロでこれまたブッ飛びました。

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Vulfpeck ”The Beautiful Game”

 

一曲目が終わって「うわぁ、マジか」ってなるアルバムはどハマる傾向にあります。

 

裏切られるの好きなのかも。

流動体についてをひたすら褒める

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こんな素晴らしい作品を1200円で提供してくれてありがとう小沢さん、って感じです。

 

たぶんもう楽勝で100周は聴いたんだけど

(気に入った曲を1時間程度のドライブ中ひたすら1曲だけリピートする、ってのをしばしばやる。)

ローキックのようにジワジワと感動が積み重なっていく感覚です。ある一発をきっかけに崩れ落ちるように泣くかも。

歌詞の内容についてはいろんな人が考察を書いてます。歌詞なんて聴いて感じたままでいいと思いますが、この歌詞は考察したくなるのも頷けるくらい良いです。今現在邦楽でいちばん好きな歌詞。

(小沢さんは東大文科Ⅲ類。小沢さんの父親は日本人だけどドイツ文学者。サラブレッド。)

 

”神の手の中にあるのなら、その時々に出来ることは、宇宙の中で良いことを決意するくらい”

 

これが大まかなテーマの部分だと思うんだけど、とにかくオザケンは人生を肯定する。僕には到底出来ません。。。

 

サウンドもトリッキーなのに耳馴染みが良くて、生演奏のストリングスも素晴らしいです。

カラオケverも入っているんだけどアレンジの凄さが際立って聴こえます。参考にできるところがたくさんあった。

それと、尖った印象の音がひとつもなかった。

とにかく録音されている全ての音に角がないというか、丸い。

わりと忙(せわ)しない曲でいろんなこと詰め込んであるのに、飽きないし穏やかな気分になれますね。

 

 

 

 

 

この1曲の話だけで一晩飲めるわ。では。