「本当に涙が出そうになります」2

昨年お店が40周年だったこと、昔東京のオーディオメーカーに勤務していたこと、変わった形の天井の秘密、JAZZ喫茶に書籍が多い理由、

 

マスターないろんなことを話してくれた。

 

「なにか音楽をやられているんですか」

と聞かれたので

 

「ジャズは聴くのが好きで、バンドではロックのようなことをやってます」

とこたえた。

 

するとマスターは

「ぼくもロックが好きでよく聴くんですよ。ツェッペリンからクイーンくらいまでですかねぇ」

と言ってLED ZEPPELINの”天国への階段”を聴かせてくれた。

1972年のカリフォルニアで録音されたライブ盤だった。大音量のVITAVOXで聴くジョン・ボーナムのドラムの迫力は凄まじかった。

 

「これはねぇ、CDのほうが良く録れてるんですよ」

とマスター。

アナログ至上主義ではないところに非常に親近感がわいた。おれもその音楽が求める容れ物というのは確かに存在すると思うからだ。

 

 

おれは考えた

 

 

「(これ、今日アラバマシェイクス聴かせてもらえるんじゃないか?)」

 

万が一の事態にそなえてレコードバッグにアラバマシェイクスのレコードを忍ばせておいたのだ。

しかし物事には順序というものがあるので、まずはリクエストをお願いした。

 

 

「スタンゲッツでオススメはありますか?」

 

 

「スタンゲッツですね、ええ、たくさんありますよ」

 

 

そう言うとマスターは棚の大量のレコードから1枚のアルバムを取り出した。